nobuの雑記帳「+バイアスを少し」

近頃なぜか真空管や電子工作に興味を持ちだし、日常生活に少しの刺激と楽しみをプラスしようと、凝り固まった頭の体操も兼ねてこの雑記帳を綴ることにしました。
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簡易型真空管カーブトレーサ (2011年9月製作)

 本器を製作したのは1年以上前になりますが、今の姿を整理するのに時間がかかり紹介が後になってしまいました。
 本器はその名のとおり真空管のEp-Ip特性カーブを計測する装置で、おまけに「簡易型」と言う冠詞が付いています。精密な計測器ではなく、あくまで大体の特性を把握することが目的のお手軽計測器です。
 巷には後光の差すような真空管試験機なるものがありますが、我々初心者はそんなものに手を出してはいけません。アマチュア精神に則り安価で簡単なものを追求しましょう。

 真空管カーブトレーサは、可愛い我が真空管の特性を一瞬のうちにあからさまにして、最悪の場合は100年の恋も・・・の如く、見てくれだけの欠陥球に愛想を尽かすことにもなりかねません。それでもカーブトレーサは憧れですね。
全体外観


(1) 構想
 海外のHPでは幾つかの製作記事の紹介があります。基本はEpスイープ、-Egステップバイアス、AD/DAコンバータが要となります。また全体をコントロールするPCソフトウェア等、とても今の自分にはクリア出来そうもありません。
 素直に、回路図やソフトウェアが公開されている事例を使わせて頂くことにしました。
 参考としたHPは記載内容も非常に詳しくて有用です。
http://www.dos4ever.com/tubetester/tubetester.html
http://www.tech-diy.com/MCTracer_no_pix_files/MCTracer_opto_ver_feb6_04.htm
http://www.dmitrynizh.com/plate-curve-tracer-acpc.htm
 結局一番簡単なここを参考にさせて頂きました。
http://www.dissident-audio.com/Traceur/FR1.html
 ここで紹介されているカーブトレーサは、お手軽&簡単に真空管の特性カーブを得るためのもので、(くどいですが)精密計測には向きません。それでも私には十分です。

 このHPはYves Monmagnon氏により運営されていますが、当該記事は執筆途中で未完成の状態です。氏に何度かメールで問い合わせをした結果、既にHPは放置状態でメンテの意志もなく、ソフトウェアに関してもWindows環境がないためアドバイス出来なく申し訳ない旨の回答を頂きました。氏はご高齢のようでもあり、皆様も問い合わせは遠慮頂いた方が良いかと思います。
 まあ、それでも基本回路とPCソフトウェアは公開されており、これらを元に実機に仕上げました。

(2) 機能
 私の製作品の機能は次のとおりです。不要な部分は省いた方がよいでしょう。
  対象真空管 : 3極管(含む3結)、4・5極管、2極管(整流管)
  対象ソケット: UX、UY、UZ、US、MT9、MT7及びCPT
  計測項目: Ep-Ip特性カーブ、Ep-Isg特性カーブ(未結線のため計測不可)
  Ep電圧 : 0~最大540Vを連続スイープ(最大値を調整可能)
  -Eg電圧 : 0~-100V(任意ステップでスイープ)
  Esg電圧 : 0~400V(外部電源)
  Ip計測範囲 : 0~400mA
  Isg計測範囲 : 0~400mA(未使用)
  ヒータ電源 : 6.3V/12.6V/0.5~25V可変
  負荷制限  : 約100W/30W/10W/3W/1W
  PC環境   : Win2000又はWinXP(Win7は未確認)
  PCソフトウェア: データ計測(Capture)及びデータ確認(Cook)モード

 Yves Monmagnon氏のカーブトレーサの肝は、小難しいAD/DAコンバータの代わりにPCのサウンドカードを用いることです。

(3) 回路構成
 全体システムはPC(含むサウンドカードとソフトウェア)、電源装置、ソケットベースで構成され、さらに電源装置はEp電源、-Eg電源、ヒータ電源及びEgs電源(外部電源)に分類できます。
モカ_平身低頭small_メッセージ

① PC
 PCは特別な処理をする必要もないため一昔前のスペックで十分です。サウンドカードは16Bit、44.1kHzでステレオ・ライン入/出力を有するフルデュプレクスが必須です。ノイズ防止のためにはUSBサウンドユニットが望ましいと思います。
 サウンドカードと電源装置はRCAケーブルで接続されます。

② 電源装置
 各種電源を作成し、Ep及びIp(又はIsg)の計測値をサウンドカードに出力すると共に、-Eg作成用信号をサウンドカードから受けます。

<1> Ep電源
 商用電源AC100V、50Hzを130Vスライダックを経由してトランスで昇圧し、0V~最大540Vの電圧(ピーク値)を得ます。この電圧をブリッジ整流して100Hzの脈流を作り、これがそのまま真空管のプレートに印加されて、Ep=0V~540Vが100Hzでスイープされることになります。
 このEpラインに入っている電圧検出用分圧抵抗と電流検出用抵抗の両端電圧(100Hz信号)がサウンドカードに取り込まれ、Ep、Ip計測値として処理されます。
 スライダック1次側には直列に抵抗が入っており、真空管のプレート損失制限を行います。抵抗値は使用トランスによってカット・アンド・トライが必要かもしれません。
 計測スタンバイ時の真空管へのストレス回避のために、Epラインにリレー接点を入れて手動でON/OFFできるようにしています。
真空管カーブトレーサ_DPM裏面

<2> -Eg電源
 バイアス電源として-Eg電圧を生成します。PC制御により0V~設定値(最大-100V)までを指定ステップで階段状にスイープします。-Egが一定値の間にEpがスイープされて、グラフ上に一本のカーブが引かれます。-Egを逐次変えていくことで複数のカーブが引かれ、おなじみのEp-Ip特性カーブが出来上がります。
 PCのサウンドカードLchから-Eg電圧に比例した1kHz信号が出力され、電源部ではこの信号を増幅・昇圧・整流して実際の-Eg電圧を生成します。
 プログラムにより-Eg最大値は-100Vが上限で、計測がSTOPの状態では常に-Eg設定最大値が出力され、Ip抑圧によりプレート損失増加を防止しています。
真空管カーブトレーサ_ステップバイアイス波形

<3> ヒータ電源
 28V、2Aトランスの整流出力を元に、降圧型DC/DCコンバータで6.3V、12.6V、0.5~25V(最大3A又は40W)のDC電圧を出力します。これで殆どの真空管に対応出来ると思います。
真空管カーブトレーサ_DCDCコンバータ基板

<4> Esg電源(外部電源)
 スクリーングリッド用のEsg電源は、-Eg電源と同じ原理でサウンドカードRch出力からの1kHz信号を元に、電源装置内で生成します。(オリジナルの構想はそうなっています)
 しかし、5極管のEp-IsgカーブではEpが小さく-Egが浅い時には数十mA以上のIsgが流れることもあり、もしEsg=300VでIsg=50mAとすると15Wの電源能力が必要となります。
 私も当初は10W程度の電源を内蔵していましたが、Isg変化によるEsgの変動が大きいため内部のEsg電源は取り外してしまい、必要により外部電源を使用するようにしました。
 EsgをPC制御で変化させるような計測は私には不要なので、これで不便はありません。
よって、Esg電源部については省略します。

③ ソケットベース
 試験真空管を装着する各種真空管ソケットを設け、電源装置とは専用ケーブルで接続します。
 各ソケットの同一ピン番号は全てパラに接続されており、電源装置からのEp、-Eg、Esg、ヒータ電源、カソード(GND)とは、ピンジャックを利用して両端プラグ付きコードでパッチ接続を行います。
 内部配線やプラグ付きコードは適宜フェライトコアを入れて、寄生発振の防止を行っています。

(4) 構造・外観
 電源部とソケットベース、USBサウンドユニット、PC(ソフトウェア)で構成されます。
真空管カーブトレーサ_電源部内部(初期)前斜め  真空管カーブトレーサ_電源部内部(初期)後斜め

① 電源部
 幅230mm×高130mm×奥165mmのケースに収めました。割と小型にできたので机上での使用でも邪魔にはなりません。
 DPMでEp電圧(ピーク値)とヒータ電圧を表示しています。
真空管カーブトレーサ_電源部外観  真空管カーブトレーサ_ソケットベース

② ソケットベース
 幅180mm×高60mm×奥120mmの弁当箱ケースに組込みました。電源部とは専用ケーブルで接続します。
 真空管ソケットはUX、UY、UZ、US、MT9、MT7及びCPTの7種類を設け、必要があればUSソケットにアダプタを取り付けて対応する予定です。

(5) ソフトウェア
 現在Yves Monmagnon氏のHPでリリースされているものはver1.09です。
 特にインストールの必要はなく、実行ファイルやDLL等の関連ファイルを適宜フォルダに置いて起動することが出来ます。
 キャリブレーションや画面設定は、*.tctファイルとして任意に保存・読み込みが出来ます。(デフォルトはCalibrate.tct)
 ソフトウェアは、データ計測のCaptureモードと保存データ確認のCookモードの二つがあり、Cookモードでは複数真空管の特性カーブの表示や3定数(gm、μ、Rp)計算、簡単な動作点検討ができます。
 保存データはテキストファイルなので、EXCELで取り込むことも可能だと思います。

(6) 使用方法
 使用方法をステップ・バイ・ステップで文書化するのはかなり繁雑です。
 要点だけを書くのでそれ以外は適宜判断して下さい。とにかく触れば判るでしょう。
 キャリブレ-ションをやらなくてもPC画面の基本動作はできるはずです。作動しない場合はどこか問題があると思いますので、頑張って下さい。

① キャリブレーション
 真空管は挿さずに行います。

<1> Ep電圧とIp電流(グラフスケール)
 Ep(DMMで実効値計測してピーク値に換算)を50V程度に設定し、Ipが100mA程度流れるような値の抵抗(W数を考慮すること)を取り付ける。(スライダックが無いならできるだけ低電圧にして)
 EpをONにしてPCでSTARTボタンを押すと、サウンドカードの選択操作の後にグラフ上に電流=電圧÷抵抗に相当する直線が引かれます。直線が実測Epと実測RとIpの関係になるように、画面のCalibration欄のKX(横軸)とKY(縦軸)に補正係数を入れます。この補正はCalibrationボタンを押すことでグラフに反映されます。
 なお、補正値はconfigurationで初期設定ファイルとして保存出来ます。

<2> -Eg電圧
 PCで-Vg1max=100V、Step=100Vに設定してSTARTボタンを押した後にSTOPボタンを押す。この状態で-Eg(-Vg1)に-100Vが出力されるように、-Eg電源部のアンプボリュームを調整します。
 -Egの直線性(整流回路のダイオード特性)の補正は、プログラムフォルダ内のG1Lookup.txtファイルの編集で可能です。この補正はPC画面のG1のチェックを外すことで適用されます。G1のチェックが入った状態(補正なし)でG1Lookup.txtファイルに記載の各電圧をPCで設定し、設定値に対する実測値を編集します。編集済みのG1Lookup.txtファイルを保存し、G1チェックを外すことで補正された-Eg(-Vg1)が出力されるようになります。

<3> Esg電圧
 もしEsg電源部を組込んだ場合は、次の手順でキャリブレーションを行います。
 Esgは-Egのような補正ファイルは無いため、PCでEsgの最大値=400V、300V、200V等の適宜の電圧を設定し、STARTボタンを押してEsgの電圧を実測して、必要によりEsg電源部のアンプボリュームを調整します。
 無負荷の状態では、Esgの電圧はほぼ問題なく実測値と合致すると思います。


② データ計測(Captureモード)
 壊してもよい(壊れていない)真空管をソケットに挿し、ピン番号に合わせてパッチ接続(3結を推奨)を行う。保護回路はないので間違えないように。
 AC100Vラインの負荷制限は最小電力又はなるべく小さな値に、Ep最大値(スライダック)は適宜の値とします。
 メニューからCaptureを選択(起動時はCapture)し、グラフスケール、-Vg1maxとPitch、Pd(最大プレート負荷の曲線、なくてもよい)を真空管に合わせて設定します。
 ヒータ電圧を印加して真空管が暖まるまで待って下さい。
 STARTを押した後にEpをONにすると、PCのグラフ上に各バイアス-Eg(-Vg1)毎のカーブか引かれます。グラフ描画の途中でSTOPボタンを押すと、-Egステップが終了した段階で計測が停止します。
 Save asボタンを押して適宜のファイル名でデータを保存することができます。
 計測終了後はストレス回避のために、Ep電源とヒータ電源はOFFとした方がよいでしょう。
真空管カーブトレーサ_5814A画面サンプル  真空管カーブトレーサ_6V6 正常とエミ減
真空管カーブトレーサ_KX80の両プレート特性

③ データ表示(Cookモード)
 メニューでCookを選択し、保存したデータを5個まで同時表示することができます。
 グラフ上にマウスでマーカをプロットすることで、そのポイントの電圧・電流や3常数を求めることができます。

(6) 所感
 簡易型なので計測精度は決してよくありませんが、簡単な回路と簡単な操作で真空管のEp-Ip特性カーブが得られることは大きな喜びです。
 現在計画している精度向上の改造案や細部の操作説明は省きますが、作動原理を理解して色々と使って工夫されるとよいと思います。

 v1.09以降のバージョンもあるようですが、先に書いたような氏の状況でリリースの可能性はありません。現バージョンでも私が使用するには何ら不足はありません。
 VB6で開発されたソースコードも同梱されており、必要によってカスタマイズもできると思います。私はグラフ目盛やチェックボックス等を若干変更して使用しています。
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