nobuの雑記帳「+バイアスを少し」

近頃なぜか真空管や電子工作に興味を持ちだし、日常生活に少しの刺激と楽しみをプラスしようと、凝り固まった頭の体操も兼ねてこの雑記帳を綴ることにしました。
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Maida Regulator の紹介

 以前製作した真空管実験用電源には、ここで紹介するMaida Regulatorなるものを使用しました。高電圧用定電圧回路の一つで、ベテランさんには今更でしょうがご存じない方には何か参考になればと思います。

 この回路は3端子レギュレータをフローティングモードで使用して、高耐圧トランジスタと組み合せて高電圧用の定電圧回路を構成したものです。原典はNational Semiconductor社(現TI社)の技術ノートLB-47で、執筆者Michael Maida氏にちなんで"Maida Regulator"と呼ばれています。
 我が国のHPではあまり事例を見かけませんが、海外ではフォーラム等でも議論されており、熱心なファンもいるようです。
Maidaレギュレータ_実装基板 タイトル



(1) 回路原理
 私の理解しているところを概略説明しますが、勘違いをしている部分もあると思われるので、原典を読んで確認して下さい。
 原理は通常の3端子レギュレータと同じで、LM317のOutとAdj間電圧が1.25V一定となるように出力電圧が制御されます。LM317は前段トランジスタによりグランドレベルから浮いて(フローティング状態で)作動し、LM317自身の入出力電圧差の中で出力電圧を一定に保つように働きます。

 参考となる資料やHPです。先ず<1>を読んで<3>を読むとよいでしょう。
  <1> https://www.national.com/an/LB/LB-47.pdf(これがオリジナル)
  <2> http://giaime.altervista.org/HiVoltSupply.gif
  <3> http://www.neurochrome.com/audio/?page_id=454(見直された21世紀版)


 以下、資料<1>LB-47記載のFig1について簡単に説明します。
Maidaレギュレータ_LB-47 High Voltage Adjustable Supply Fig1回路図

 ① LM317の入出力電圧差
  ツェナーダイオードD1がLM317の入出力電圧差を決定し、これにより耐電圧を超えることはありません。
   LM317入出力電圧差=D1ツェナー電圧-(Q1のVbe+Q2のVbe)=6.2V-(0.6V+0.6V)=5.0V

 ② 電流制限
  LM317のIn端子に直列に入っている抵抗R3で、過負荷や短絡時にLM317の電流制限を行います。
  電流制限値=入出力電圧差/R3=5.0V/100Ω=50mA
  出力電流が50mAを超えると定電流モード(電流一定で電圧が低下する)となります。この計算はちょっと抜けている部分があり、後ほど説明します。

 ③ 出力電圧
  出力電圧は抵抗R5と可変抵抗R6により決定されます。
   R5に流れる電流=LM317のOutとAdj間電圧(=1.25V)/R5
   R6に流れる電流=R5に流れる電流-R4に流れる電流(≒0)≒R5に流れる電流
  よって、
   出力電圧=(1.25V/R5)×R6+1.25V

 LB-47では高耐圧トランジスタにダーリントン接続を使用していますが、現在では高耐圧MOSFETを使用するのが簡単で一般的ですが、考え方は同じです。


(2) 特徴
 ・リップル除去性能が高い ・・・・LM317の効能です。
 ・ソフトスタート(21世紀版での改良)
 ・回路が簡単で安価 ・・・・これに尽きるような。


(3) 実際の回路の例
 以前試作として組んだものの回路と写真を示します。これをベースに説明します。
 (H26.12.30) 回路にミスがあり修正しました、申し訳ありません。ご指摘いただきありがとうございます。
Maidaレギュレータ_回路図rev1small  Maidaレギュレータ_定電圧回路定数

Maidaレギュレータ_基板


 ① 出力電圧の決定
  Maida Regulatorは三端子レギュレータの特性を利用して出力電圧を決定します。
  LM317の出力電圧の計算式は次のとおりです。
   Vout=1.25(1+(R1+R2)/Rref)+Iadj×(R1+R2)
     =(1.25/Rref)×(R1+R2)+1.25(Iadjは数十μAなので無視)

  すなわち制御電流(1.25V/Rrefの定電流)×(R1+R2)で出力電圧を設定できます。
  制御電流を2mAとしてR2に100kΩポテンショを使用し、2mA×100kΩ=200Vの可変範囲としました。制御電流2mAを流すために、Rref=1.25V/2mA=625Ω(560Ω+100Ωトリマ)としました。
  出力電圧を150V~350Vとしたいので、R2(ポテンショ)に直列のR1で嵩上げします。R1=(150V-1.25V)/2mA=74.4kΩとなり、75kΩを使用します。

 ② 最小負荷電流の考慮
  LM317は正常作動する為の最小負荷電流が3.5mAと定められており、常にこれ以上の負荷電流が流れるように工夫する必要があります。
  制御電流を2mAとしたので1.5mAの不足です。これは電源回路の出力端子にブリーダ抵抗を入れて賄う必要があり、最低電圧150V時に1.5mA流せるようにブリーダ抵抗=150V/1.5mA=100kΩを外部にパラ接続しました。
  最小負荷電流にあまり気を遣う必要がないLT3080(最小負荷電流=0.5mA)の方が使いやすいかもしれません。

 ③ 電流制限
  過負荷・短絡保護の電流制限Ilimは、LM317のIn端子に入った抵抗R3で決定されます。
   R3=(Vz-Vgs-V317drop)/Ilim
    Vz :LM317のOut端子とFETゲート間のツェナー電圧
    Vgs :FETのゲートスレッショルド電圧
    V317drop:LM317の最小ドロップアウト電圧(約1.6V/100mA、25゚C)

  試作では、R3=(10V-4.3V-1.6V)/120mA=34.2 →33Ωを使用しました。
  先に説明した資料<1>LB-47では、最小ドロップアウト電圧が加味されておらず、少し計算結果に違いが出てきます。(ドロップアウト電圧とはレギュレーションを維持するために必要な入出力の最小電位差で、最小制御電圧又は最小入力電圧のいずれか)


(4) まとめ
 割と簡単な回路で、高電圧用の定電圧電源を構成することができ、おまけにリップル除去等の性能はLM317の恩恵を受けることが可能です。
 色々なところに汎用的に使える回路だと思いますので、覚えておいても損はないと思います。
 ただし、オーディオアンプ等での音の違いにどのように影響するかは、個人的には関心が無くまた区別する耳もありませんので・・・。
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