勢いにまかせて進みます。
前回まででハードが組み上がり、AVRマイコンにもファームが書き込まれて準備ができました。
今回は製作したトランジスタテスターに電源を入れ、セルフテストと実際の使用方法について簡単に説明します。
(1) 最終チェック
簡単な回路なので製作ミスがなければほぼ間違いなく作動します。
① チェック(共通)
マイコンと電源(電池)を取り外し、再度結線とハンダ付けを確認して下さい。
電源を接続(簡単回路は電源SWをON)して異常がないこと、Vcc端子に5Vがかかっていることを確認します。
ここまでOKなら電源を外してマイコンを取り付けます。
② 基本作動(推奨回路版)
プローブをオープンにしてテストボタンを押すと、電源ONとなってLCDのバックライトが点灯します。LCD表示が読みやすいようにコントラストVRを調整して下さい。
数秒で"No, unknown, or damaged part"(部品未検出)と表示され、その後数秒で検出開始"Testing..."し、また数秒後に"No, unknown, or damaged part"と繰り返します。ここでテストボタンを押すと検出開始"Testing..."となります。
この一連の動作が正常であれば問題なく作動しています。
テストボタン操作をせずに"No, unknown, or damaged part"表示が5回(回数はファームによる)連続すると電源が自動でOFFとなります。その後テストボタンを押すと電源が自動でONとなり検出を始めます。

③ 基本作動(簡単回路版/自動電源OFF機能なし)
プローブをオープンにして電源ONとし、LCD表示が読みやすいようにコントラストVRを調整して下さい。
数秒で"No, unknown, or damaged part"(部品未検出)と表示され、そのままにしておいても再検出を開始しません。(ファームにより繰り返しも可能)
この状態でテストボタンを押すと、検出開始"Testing..."となります。
この一連の動作が正常であれば問題なく作動しています。
④ 初期計測確認(共通)
試しに1kΩ程度の抵抗を適当なプローブに接続し、テストボタンを押して下さい。
LCDの1行目に抵抗のシンボルと接続したプローブ番号が表示され、2行目には計測結果(1kΩ前後の値)が表示されるはずです。
(2) トラブルシューティング
① 電源がONとならない(自動電源ON/OFF機能)
テストボタンを押した状態でマイコンのVcc(Pin7)とPD6(Pin12)の各々のGND間電圧を確認し、Vccが5VなのにPD6が4V以下ならマイコンが正常スタートしていません。
→*.hexが正常に書き込まれたか?fusebitが正しく設定されたか?
正常(PD6が5V)なのにテストボタンを放すと電圧を維持できないなら、次をチェック。
→LEDの方向が逆か壊れてないか(点灯してないか)?
→トランジスタのhFEが小さ過ぎないか?
② 電源は入るがLCDに何も表示されない
→接続が問題ないならHD44780互換品でないのでは?
→コントロールタイミングの不整合は?AVRマイコンのクロック設定(Makefile、fusebit)が間違っていないか?
③ LCD表示文字が意味不明
→*.eepファイルが正確に書き込まれているか?
→3端子レギュレータが発振していないか?低損失型はCの値が不適切だと発振しやすいようです。
④ 動作が非常にスローモー
テストボタンを押して表示までに数十秒もかかるなら、マイコンのクロック設定が不適切です。
→fusebitで1/8分周になっているのでは?
(3) セルフテスト
パーツ識別や大凡の値が表示されるなら完成は間近です。セルフテスト(キャリブレーション)で最後の仕上をします。
① セルフテストとは
製作後やファーム更新後はセルフテストが必要です。このテストは作動確認の他にゼロオフセット、ポート出力内部抵抗、アナログコンパレータのオフセット、ADCスケール等の補正データを自動的に取得・記録します。
② セルフテストの開始
3本のプローブを互いにショートし、計測を開始することでスタートします。プローブのショートが不完全だと低抵抗と誤認識するので注意して下さい。
③ テスト数
項目は合計12個あり1ステップずつ進みます。各々の内容についてはドキュメントを読んで下さい。
④ 浮遊容量チェック
項目4でプローブを開放するようにメッセージが出るので、プローブ端を開放して下さい。浮遊容量のチェックなので本体やプローブ、リードに触れないように。
⑤ コンパレータのオフセット計測
項目11でプローブ1と3の間に100nF以上のコンデンサを接続するようにメッセージが出ます。100nF(0.1μF)~20μFの適当なコンデンサ(フィルムや積層セラミックがよい)を接続すると先に進みます。テストが完了するまで手を触れないように。
⑥ テストの完了
完了すると"Test End"とファームバージョンが表示されます。
テストで得られた補正値はEEPromに書き込まれ、計測時に自動的に適用されます。もし、プローブを変更した時や計測値がおかしな時は、セルフテストで補正値の更新をして下さい。
(4) 使用方法
特に説明の必要はないと思いますが注意点を幾つか。
① 注意点
コンデンサを計測する場合は完全放電させてから接続するように。回路中のパーツを計測する場合も電圧がかかっていないことを確認して下さい。
マイコンの入力ポートは保護されていないので即壊れます。もし保護が必要ならドキュメントに記載の保護回路を追加して下さい。
一般に有極コンデンサ類はマイナス極を小さな番号のプローブに接続しますが、計測電圧は0.3~1.3Vなので逆耐圧が問題にならない限りどちらでもOKです。タンタルは極性を気にした方が良いでしょう。
AVRライターをISP端子に接続したまま計測すると計測結果が不正確となります。
② 使ってみよう
パーツの端子が2個なら3つのプローブの内2つを適宜接続し、端子が3個なら3つのプローブを適宜接続することで計測ができます。
計測結果に影響が出るため、計測中はテスター本体やプローブ、パーツに触れないように。なお大容量の電解コンデンサはその容量にともなって時間がかかります。
計測は5秒毎(変更可能)に繰り返され、推奨回路ではパーツ未接続の状態が5回(変更可能)繰り返されると自動で電源OFFとなります。また同一パーツが10回繰り返し検出されても自動で電源OFFとなります。途中で押しボタンスイッチを押すとカウントはリセットされます。
③ 検出不可能なパーツ
4.5V以上のツェナーダイオード、ホールド電流60mA以上のトライアック等々、現時点では識別・計測不可能なパーツは多数あります。
計測可能なものをユーザが認識し、計測方法を工夫(例えば微小容量には既知のCを抱かす、ブリッジダイオードは2方向計測、バイポーラコンデンサのESRは双方向計測・・・等々)して下さい。
ドキュメントにも記載されており、フォーラムには多くのレポートがあります。
(5) その他
① 期待半分で
本プロジェクト(AVR Transistortester)は、シンプルな回路でいかに工夫して機能・性能を発揮させるかに重点を置いた趣味のテーマです(と理解しています)。市販商品ではないので性能に対して大きな期待はせず、趣味の範疇で楽しみましょう。
② 今後のファーム更新に伴い、ハードの変更やMakefile設定の変更があると思われますが、基本は同じだと思います。
③ パクリ製品も
回路が簡単でもハード製作は面倒だ、と言う方には某国製のパクリ製品が入手できます。eBayやヤフオクでも見かけたことがあるので探してみて下さい。
クローン製品と言うよりそのままパクリですが、きちんと使用するには少し手を入れる必要があるようです。1.06kのドキュメントにはこのあたりのアドバイスも書かれていますのでご参考に。
まあ、しかしこんな物まで商売にするとは・・・。

(6) 最後に
だらだらと纏まりのない製作ガイドでしたがこれで終了します。適確な説明ができませんが初心者の方もぜひトライして下さい。
そして気が向いたら
フォーラムも覗いて下さい。
質問やリクエスト、自作品紹介など何でもOKです。多用語はドイツ語ですが近頃は英語の書き込みも増えました。怪しい英語や訳分からないドイツ語でもきちんと返事がもらえるので、気楽に参加しましょう。
最後に、このようなプロジェクトを立ち上げ・推進し、無償で情報公開されているMarkus F.氏とKarl-Heinz氏に感謝致します。
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